呼吸

(2005年11月16日)

管楽器の音の出る仕組み

息によって音の出る楽器が管楽器である。
西洋の管楽器は木管と金管に分類されている。
和楽器には(たぶん)金管楽器はない。

金管楽器はトランペット、トロンボーン、チューバなど「金属で出来ている楽器」だが例外もある。
サックスは開発された当初から金属製だが、リード楽器なので木管楽器。
フルートはもともと木製だったから木管楽器なのだが、材質の硬さを求めるうちに現在は金属製となったそうだ。
金管楽器の共通点は「唇が振動して音になる。楽器の構造はとっかかりのない1本の管」ということ。
この事実を管理人は高校一年で知って「(おもちゃでなく本物の)ラッパはただの管なんだ!」(笑)と大変衝撃を受けた。
ただの管を唇の振動によって鳴らしているので、金管楽器の基礎練習には「バズィング」(buzzing=ミツバチの羽音)という、唇だけで「ブ〜」という音を出す過程がある。
また、たいていの金管奏者はある程度の硬さがあれば、そして唇の幅よりも小さいものなら、どんな管でも音は鳴らせる。

木管楽器には、リード楽器と笛がある。
リード楽器とは、クラリネット、サックス、オーボエ、ファゴットなど。
リードと呼ばれる部分をくわえて吹くと、それが振動して音になる。
リードは葦で出来ていて、パッと見たところはアイスクリームを食べる時の木匙に似ている。
オーボエ、ファゴットはリードが2枚なので、ちょっと変わった独特の音色になる。
幸弘さんがライブで吹く「ルネッサンス・ショーム」という楽器もこの仲間だそうだ。

笛にはたて笛と横笛がある。
2005年1月の「ヲヒヤリ その十五」のリーフレットには、
「同じ笛ですが、横笛とたて笛は『似て非なる』ものです。たて笛を吹くことにより横笛のすばらしさが、横笛を吹くことによりたて笛のおもしろさがわかり、常に自分にとってさまざまな発見があります。」
と幸弘さんの解説が書かれている。
たて笛の内部には「とっかかり」(リコーダーの説明書にはラビュームと記されている)があり、そこを息が通過すると空気の流れが乱れて音になる。
オカリナや尺八も同じ仕組みなので「穴のところ(歌口)をくわえ、縦に持って吹く」演奏スタイルになる。
宗教学者の鎌田東二さんが、自然に穴が開いた石を吹くと鳴るという「イワブエ」を吹くのを聴いたことがあるが、この楽器も同じ仕組みだと思う。大自然の不思議である。
横笛は穴(歌口)に対して横から息をあてると「カルマ渦」が発生し、音になる。
原理としては、瓶やペットボトルの口を横から吹くと(角度がうまくいけば)「ボー」と汽笛のような音がなるのと同じである。

いずれにせよ「息」が音のエネルギーの元となっていて、声に近い、魅力的な楽器だなぁと思う。

息の長さとブレス

管楽器奏者は、一つの音を切らずに演奏するためには出来るだけ長く息を吐き続けなければならない。
管理人は肺活量3000ccで女性としては多い方だが、ただ息を吐いているだけでも50秒しか続かない。リコーダーの音だと20秒弱である。
もちろんプロ奏者はもっと長く息が続くが、それにしても限界がある。
そこで息継ぎ(ブレス)をする。
短時間にたくさん吸うため、吸う音が聞こえることがある。
また、他の奏者とタイミングを合わせるために敢えて音をたてて息を吸っている時もあるようだ。

それにしても夜中ヘッドフォンで聴く幸弘さんのブレスは、とても魅力的である。
幸弘さん以外の奏者のブレスは気をつけて聴いたことがないので、比べようはないのだが(笑)
特に、曲の頭にまず聞こえてくるブレスは、これから始まる魂を抜き取られるような体験の予告編に思えてしようがない。

ブレスをしない方法も実はある。
「循環奏法」といって、鼻から息を吸いながら口から吐く。
これは現代音楽の手法だそうだ。
鼻も口もノドの奥で合流して気管に続いていくはずなのに、どうしてそんなことができるのだろうか?
肺から出る空気と肺へ入る空気が、それぞれの通り道を確保している図が管理人の頭に浮かんでくるが、それで合っているかどうかはわからない。
とにかく実際やっているのだ。
ライブハウスのように近くで幸弘さんの口元を見られる場合は、循環奏法を使っている時は口の回りの動きに特徴があるのでわかる。
能楽堂だと席が遠くてそこまでは見えないのだが、幸弘さんと同じタイミングで息を吸って静かに吐いていると、超人的に長く音が続いている場合は気が付くので「あ、循環奏法だな」とわかる。
これは、一体感があってけっこう楽しい♪
(でも、もし回りの迷惑ならやめますので、ご一報ください。)
循環奏法だと音は続くが、音質は同一とはいえず、まだらな感じになってしまうのも確かである。






唱歌(しょうが)

(2005年9月14日)

「にほんごであそぼ」

2005年9月5日、NHK教育テレビ「にほんごであそぼ」で『狂言羯鼓』が放映された。
野村萬斎さんが、隣で吹いている幸弘さんの笛とともに舞う。
最後には見事な側転(「水車」というらしい)をキメて退場する、というものである。

翌6日は、萬斎さんとこどもたちが様々な「鳴り物」(台所用品、園芸用品など)を鳴らしつつ、昨日の笛と同じメロディを謡う。
タイトルは『鍋八撥』。
幸弘さんは、笛の音のみで映像なし。

この二つの演目で謡われ、画面に文字として出るのが「唱歌」である。

私はしばらくのあいだ、この単語を「しょうか」と素直に読んでいたが、本当は「しょうが」と濁点をつけて読むらしい。
いつかのライブで、「普通黒い文字で書かれているが、もし、赤い文字だったら『紅生姜』」(笑)と幸弘さんが話すのを聞いてわかった。

『狂言羯鼓』の唱歌は次のようである。
注1:(  )内は耳で聞こえる音
注2:唱歌には、「ヨ」や「ヤ」など本来濁点がつかない文字に濁点がついていることあり。
時には3濁点。
また、波線が引かれたり、「引」という文字がついてきたりもする。が省略。

ヒ.
(ひー)
ヒヨラ イト ヒヤリ.(ひょーらー  いと  ひゃーり)
ヒヤリ.(ひゃーり)
ヒ ヤ リ.(ひ  やーり)
ヒヤリヤ アラ ラリ.(ひゃ  りや  ららーり)

これを無理矢理「もとこ式」リズム譜にすると、

ヒ.
全音符
ヒヨラ イト ヒヤリ.休 ・ ● ・ ● ・ ♪♪ / ○    ・ ● ・ 休 /
ヒヤリ.○    ・ ● ・ 休 /
ヒ ヤ リ.● ・ ○    ・ ● /
ヒヤリヤ アラ ラリ.休 ・ ● ・ ● ・ ● /● ・ ○     ・ ●/

(●は四分音符、○は二分音符を表している。)

こんな感じ。

唱歌とは、昔からあるもので、メロディを言葉で表して伝えているものだそうだ。

唱歌のタイトル

幸弘さんの曲には、唱歌がそのままタイトルになったものがある。

「リーヤリ」
「タウタウヒー」

「ズウター」はどうなんだろう?唱歌ではないのかな?

♪リーヤリリーヤリリーヤリリーヤリ♪と「リーヤリ」の頭のメロディを口ずさむと、何か楽しい。
口ずさんでいると、笛が習いたくなる。(笑)
ま、今は無理だなぁ。
でも、いつかは!






笛のいろいろ(2)

(2005年8月6日)

田楽笛、篠笛

田楽笛とは「のど」なしの能管で、故野村万之丞さん演出の楽劇「大田楽」のために幸弘さんが考案したものである。
新作能『鷹姫』や、茂山家の新作狂言でも使ったことがあるらしい。

篠笛は、祭囃子で使われる笛で、長唄(歌舞伎の音楽)では「たけ笛」と呼んでいるとのこと。
篠笛は、外側を巻いていないのでどんなに良い笛ではいずれ割れてしまうそうだ。

実は我が家に、篠笛らしき笛がある。
20年ほど前に、とにかく音の出るところまでは習ったことがあるのだ。
誘われて入ったサークルのようなものだったが、当時は別のことの方が魅力があり、すぐにやめてしまった。

もったいなかったな・・・

田楽笛も、篠笛も、ライブハウスで持ち替えて吹いているのだが、私にはまだ音色の違いがそれほどはっきりとはわからない。
比べて吹いてくれて、「能管のほうがお化け大会にふさわしい感じでしょ?」と言われると、そうだなあとは思う。

ごめんなさい。

「体育会系批判」

この「isso 謳歌」開設のきっかけの一つになったできごとがある。

とある能楽関係者のサイトに、名指しではないがよく読めば幸弘さんについてだとわかる批判が載った。
『粗い』『音がぞんざい』『テクニックはすごい』『情趣もへったくれもない』

また、その記事に関連した投稿で、「体育会系」という言葉が使われていた。

その言葉を見て、ドキッとした。
「体育会系」という批判は、技術はあるけれどもその技術で表現したい中身がなく、つまらないということだろう。
この批判をした人々は、幸弘さんの能舞台しか知らないようだし、「能の囃子として」という前提がついてのことのようだが、無視できない引っかかるものを感じた。

速いパッセージを正確かつおもしろく演奏する幸弘さんに、みんな感動する。
スローなテンポの曲で心を打たれたことは、確かにあまりない。
でも、幸弘さんの音楽にすごく心が惹かれる。
批判に耳を貸さないというようなファンではないが、批判されるとつらい。

いろいろな思いが駆け巡り、胸が痛んだ。

その次に幸弘さんを聴いたのは、能『鞍馬天狗』だった。
あとからご本人に確かめたら、「何も特別なことはしなかった」とのことだが、私には能楽堂では聴いたことのない装飾音に聞こえたし、何より他の3人の囃子方(小鼓、大鼓、太鼓)とのバランスが悪かった。
方向性が違う、あるいは意気込みのようなものが違う。
極端に言うと、幸弘さんの笛が浮いている。
「なんで合わせてくれないのか」と思った。

ただ、同じ舞台を観た人で私と同じような感想を持つ人には、まだ出会っていない。
なので私の思い込み、思い違いということかもしれない。

このことで、また胸がズキズキ痛んだ。

思えば、幸弘さんの音楽への気持ちを自分ではっきり意識したのは、この頃だ。
そして、とある舞台チケットを人に譲ってでも幸弘さんの話を聞きに朝日カルチャーへ参加し、大阪までライブに行き、ファンサイトを開設するに至る。

ここまで来るのは、アッという間だった。(笑)

替えの譜

能楽評論家からの批判については「変わった事をやると批判される」と朝日カルチャーで話していた。
(ただし、この話と『情趣もへったくれもない』という批判とは噛み合ってはいない、と思う。)

一般によく演奏される譜以外に、流儀に伝わる「替えの譜」というものがたくさんあるが、やると「突飛なことをするな」と言われるので誰もやらない。
何をやっても文句を言われない年齢になると、替えの譜が覚えられない。(笑)
そして替えの譜は風化してしまう。

この話を聞いて、「なんて自由度の低い世界なんだろう」と心底思った。

負けるな!一噌幸弘!



『鞍馬天狗』の件は、幸いにも直接質問することができた。
「替えの譜」でやったわけではないそうだ。(なので、やっぱりド素人の勘違いなのか(笑)・・・)
囃子方のバランスについては、その日のメンバーによる。笛が目立つやり方と、互いにツンツンやりあうやり方がある、という返事をもらった。




笛のいろいろ(1)

(2005年7月23日)

はじめに

幸弘さんは能楽一噌流の笛方で、9歳から舞台に出ているそうだが、ライブではいろいろな笛を吹く。
「能管だけ吹いていると、これ(能管)の本質的な良さがわからない」と朝日カルチャーの講座で話していた。

そんなものなんだろうな

素人の感想は、こんなものである。(笑)
でも、笛のいろいろについて知ったことがあるので、このページに記しておこうと思う。


能管

能・狂言の世界では、単に「笛」と呼ぶ。
「THE笛」ということなのだろう。
(ちなみに、単に「太鼓」と呼ばれている楽器もある。)
別の言い方では「能管」である。
「のうかん」と読む。下手をすると「納棺」と変換されてしまうので、ぜひ単語登録をしていただきたい。

能管は竹で出来ている。穴は七つ。横笛の一種である。
大きな特徴は、内側に「のど」と呼ばれるごく薄いもう1本の管が入っていること。
のどの長さは、笛本体よりずっと短く、それが入っている部分だけ内径が小さくなり、音程を乱すらしい。
あえて乱すところが不思議だ。
ちなみに「能管でドレミが吹けるのは一噌幸弘だけ」と言われているそうだ。それくらい音程をとるのが難しいらしい。


ゲムス・ホルン

明るく、かわいい音色のたて笛。この音色を聞くと中南米を連想する。
別名つの笛。
動物の角から作っているのだろう。


リコーダー

「リコーダーはいつからやっていますか?」という質問に、「まずは小学生ですよね(笑)」「人に5、6回は習ったことがあります」と答えていた。(2005年7月、朝日カルチャーにて)
そのあとは自分で練習して、あのレベルなのだ。(高校2年生で1981年度全日本リコーダーコンクール最優秀賞受賞)
とにかくはまってとことん研究し、技術を身に付けていったということ。

天才だと思う。

さて、リコーダーの話。
「バッハ、テレマンの時代はリコーダー全盛だったが、音量の点で他の楽器に押され、音楽界のオモテ舞台からは後退してしまった楽器」と理解している。
確かにオーケストラにはリコーダーはない。対抗するのは無理だろう。
でも、とても親しみがあり、味わい深い音色の楽器である。

幸弘さんと言えば、『たて笛を2本くわえて吹く人』として有名だ。
発想としてはそれほど珍しくないが、実際に2本くわえて吹く奏者は他に知らない。
リコーダー×リコーダー の時もあれば、
リコーダー×ゲムス・ホルンの時もある。
片手で1本ずつ持っているので、薬指、小指は穴を押さえていない時は笛を支えるためにサッと後ろ側に入っている。
そんな指の動きを見ているのも、ライブの楽しみの一つである。






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