その音楽性:『Vision That You Give』は、最初の、そして長めの曲で、それを支配する要素は足立のアコスティックギターと一噌の笛による達人技である。音は明るく、速く、アコスティック中心である。これをジャズと呼ぶ人もいるかも知れない(ディスクを受け取ったときCDDBは確かそう言った)が、実際には私は民俗音楽をより近しく感じた。形式はジャズ風なものより古典に方向が向いてさえいる。そこにヴァイオリンが加わると、さらにジプシー風の情熱が加わる。笛の奏法は揺れ動き、旋律の森を通して、時にとめどなくさまよう。循環する主題は素晴らしく、残りの部分のとりとめのない表情をより受け止めやすくする。このトリオの最も近くに位置するのはドイツのバンド、フレアークではないかと思う。
次の二曲は少し短めだが、それらの内の一曲目、『Night Dance』は最初の曲『Vision That You Give』とあまり違って聴こえない。ギターが力強い役割を演ずる中、ヴァイオリンがムーディーな演奏をする。『When That I Was A Little Tiny Boy(十二夜、子供の頃)』で、ギターはさらに開放され、笛とヴァイオリンは脇役を演ずる。歌が歌われ、ジェスロタルの民俗音楽的要素の傾向を多少感じる仕上がりになっている。
『Housewarming In Alaska』は(いくつかの理由から)悲しげな曲であり、注意深く演奏されている。ヴァイオリンとフルート(何であろうと笛の類の意)が、それぞれにとらわれずに類似の並行するメロディを弾く中、ギターが循環するパターンを繰り返す。この曲には森の鳥達が立てる音に非常に似た音がある。
『Short Summer In Valhalla』のような曲は力強い演奏にも関わらず、何か過ぎ去った物に、新らしさをもたらす。『Lost On The Way Home 』はその曲のゆったりした速度が、聴く物を悲しみに沈ませる。ヴァイオリンはより重く、笛は少し控えめだが、同じ色調を持つメランコリックな作品である。音の色調は意図的に合わせられていると、言わざるを得ず、それは、少ない種類の支配的な楽器の使用と、類似した奏法を使っている故である。